デニーズへようこそ(2017年8月19日)
「デニーズへようこそ!」
店員さんの明るい声が店内に響く。
俺の肩にはピカチュウが載っているが、そこには微塵も触れず、女性店員は営業スマイルだ。
「何名様でしょうか?」「おタバコはお吸いになられますか?」
矢継ぎ早にマニュアル通りの接客をする女性店員。
「3名、禁煙」と答えると、奥の席へと案内された。
渾身のギャグであった肩にピカチュウが居るぐらいでは店員は動揺を見せない。
異常事態でも冷静な対応が出来る様、日々教育が行き届いている成果であろう。
もともとは、ちひろの笑顔(目を細めて相手を少し呆れた感じと言うか、小バカにした様に微笑む顔)を見る為の悪戯であり、その目的は既に店外で合流した際に達成済みなので個人的には問題はない。
しいて言うなら、「なんでピカチュウのってるの?」と言う客の冷たい目線が痛いだけである。
店内は何かの打ち上げでもあったのか、いつになく満席状態で賑わっていた。
席に着き料理を注文した我々は、雑談をしたのち、映画の感想戦を始めた。
詳細はネタバレするので語らない。
ただ、原作で感動する部分がカットされてたり、もっと表現方法を変えれば泣けるところなのにその表現が出来てない。実に惜しい。
結論として原作小説を超えられなかったと言う結論に至った。
今回さきちゃんと映画を見た事で、少しさきちゃんの人柄が見えてきた。
彼女は現実主義者で自分の意思を明確に持っていて、少し頑固な一面もある。
多分、余り周りに流されないタイプだろう。
ちひろが微妙な誘いに対して「どうしよう~」と思わせぶりな態度で微笑み、その場を誤魔化して物事を先延ばしにするタイプなら、さきちゃんは、ズバッとその場で自分の意見を出して、完結させるタイプであろう。
デートに誘ってその場で「行かない」と撃沈するのがさきちゃん。
デートに誘って、脈がありそうな香りがするが、そのまま時間だけが過ぎて行って自然消滅するのがちひろと言った処だろうか。
そう言う意味で正反対の二人である。
その姿は、いくつかの会話からも垣間見える。
ちひろが『打ち上げ花火、下からみるか?横からみるか?』が観たいと言い、俺も興味があったので、今度は3人で観に行こうと言う話になった。すると・・・
「二人で行って下さい。私はすずちゃん嫌いなので観ません」とさきは微笑んだ。
えっ?そこは頑なに拒まず、多少は付き合いで見たっていいのでは?
だが強要はいけない。
これからもいろいろなイベントを企画する。強要されてイヤイヤ参加するのもね。
時間と労力の無駄ですから、参加したいイベントに自主的に参加する。
そのスタイルは大切だと思うし、尊重すべきだと感じる訳です。
ちなみにちひろは、映画が終わり合流するまでの間、一人カラオケを楽しんで時間を潰したらしい。本当は同じ様な時間に、『打ち上げ花火・・・』が上映していたので観たかったようだが、「流石に今回も一人で観ると、俺に殺される」と思ったらしい・・・
なかなか良い心がけである。
俺のネチネチ攻撃がボディブローの様に効いている様である。
クックックッ・・・
俺は悪魔の様に微笑むのであった。